これまでの墓石は、ほとんど同じような形のものでした。ところが最近、個性的な墓が登場しています。
ギターが好きだった人のお墓は、ギターの形をしていたり、将棋の好きな人が、将棋盤の形をしたお墓を作るなど、「その人らしさ」を演出する墓石が見受けられます。
個性的なお墓は、全体としてはまだ少数ですが、増える傾向にあります。また、「家墓」ではなく、家族や血縁を越えて不特定多数の人のお墓を一基に集めた「集合墓」、多くの人の遺骨を合わせて葬る「合葬墓」なども増え、変化は墓石ばかりではなく、一緒に入る人の範囲やシステムにまで及んでいます。このように、お墓も社会の多様化への対応とともに個人を尊重した「その人らしく」という志向が出はじめています。
従来の日本のお墓は「○○家之墓」という家名が彫られた「家墓」が一般的です。
それは代々承継者がいて、寺院の檀家になりお布施や管理料を払って永続的に使用できるシステムをとっています。そのため独身者、子供のいない夫婦、離婚者、転勤による住所移転、女子だけの家は、お墓の承継者がいないということで、無縁墓地化が心配されたり、墓を入手させてもらえないといった状況も起きてきたわけです。人々の生き方が多様化したにもかかわらず、墓だけは承継者を必要とした「家墓」だけだったのです。
しかし、1980年以降にこういった傾向がより一層深刻化してきました。80年代に入ると、従来の枠組みに入らない家族の形態がしだいに増えはじめ、家族の”ゆらぎ”の時代ともいわれるようになりました。それを具体的にあげると、核家族がさらに核分裂を起こして独身者が増加したり、離婚率の上昇、晩婚化、子どもをもたない夫婦の増加、少子化などがあげられます。これらの変化をお墓からみれば「承継者のいない人」の増加を意味しています。
後継ぎがいなくても、お寺に一任できるお墓(永代供養墓、永代供養付き自由墓地・個別墓)は、その多くは一つのお墓のなかに、みんなで入るような形になっているところから、「集合墓」「合葬墓」「総墓」などという言い方がされます。しかし、家族や夫婦で入る永代供養付き「個人墓」「夫婦墓」等は専用のお墓であり、残された家族が一般のお墓と同じようにお参りもできます。まさに多様化に応えた21世紀のお墓といえます。
東京都が以前実施した「都市型墓地に関する意識調査」で「誰と一緒に埋葬されたいか」について回答(複数)を求めたところ、「配偶者」が45%で最も多く、ついで「家族」44%が続き、「子供」25%、「先祖代々」21%「親」20%となりました。核家族を反映して「親」とか「先祖」と一緒というよりは、世帯単位で埋葬されることを望んでいる人が多いことがわかります。また、子どもを束縛しない、あてにしないでと考える人も多くなっていることがわかります。
別の「都民要望に関する世論調査」(東京都調べ)では、「夫婦が同じ墓に入る必要はない?」という質問項目に対して「そうは思わない」」という人は61%ですが、「そう思う」と考えている人も34%いることがわかりました。このような「死後の自由」を求める気持ちは男性よりも女性に多く、既婚者で「夫婦が同じ墓に入る必要はない」と答えた女性は35%で男性を4ポイント上回っていました。そう答えた女性を年代別にみると20代が最も高く49%、ついで40代が44%でした。
知人や友人など親しい同士で一緒に墓に入ることがあってもよい、と答えたのは女性が47%、男性はそれよりずっと低く39%、なかでも40代の女性で肯定する人が51%と半数を越え、同年代の男性より10ポイントも高かったのが目立っています。男女で意識の差が見受けられるようです。
お墓は子どもがいても女子の場合は継ぎにくいものです。それは、女性が結婚すると夫側の家の人間になった、戦前の家制度時代の意識が今なお色濃く残り、結婚改姓した妻は、実家の墓を継ぐのが困難であるといった事態を引き起こしているからです。
新潟県の承継者を必要としない「安穏廟」の購入者をみるとその購入理由に、子どもが「女子だけ」という人が20%あり、「子どものいない夫婦」の24%に次いで多いことがわかります(東京都女性財団助成研究「変わる家族と女性の墓」)。
これも、女性が墓の承継者として認められにくい状況を物語っています。かって、子どもの数が多かった時代には、家名を継ぐ男の子が産まれる確率も高かったし、女の子しか生まれなくても「婿養子」をもらって家名や墓を継がせていました。現在は、少子化で産む子どもの数が少なくなったうえに、養子をもらってまでも継がせようという意識が薄れてきました。
お墓にもまた、双系化の傾向が見受けられます。それが、夫側、妻側の両家を祀る「両家墓」です。少子化がすすむと、墓や仏壇を抱えた者同士の結婚も多くなり、一家に仏壇や墓が2つ3つということもでてきます。墓石に2つの家名を並んで刻まれるものも多く見受けられるようになりました。
女子だけの家の場合、この両家墓をつくるか、あるいは墓石には「寂」などの文字を刻み、家名を刻まないか、承継者を必要としない「永代供養墓」「合祀墓」を求めるかという3つのケースが多いようです。「家の墓」にも限界がきています。これは今後の大きな問題でもあります。後継ぎがいなくても、死後を安心してお寺に託せる永代供養墓の普及と理解がとても大切です。 →永代供養墓普及会とは